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東京地方裁判所 平成7年(特わ)3574号 判決

裁判所書記官

村瀬雅春

本店所在地

東京都新宿区西新宿七丁目二二番一九号

大新電設株式会社

(右代表者代表取締役 伊藤嘉一)

本籍

東京都八王子市東浅川町五三〇番地一八

住居

東京都八王子市東浅川町五三〇番地の一八

無職(元会社役員)

大阪照久

昭和二二年八月一六日生

右の者らに対する各法人税法違反被告事件について、当裁判所は、検察官長島裕、弁護人土屋東一(主任)各出席の上審理し、次のとおり判決する。

主文

被告人大新電設株式会社を罰金二〇〇〇万円に、被告人大阪照久を懲役一〇月に処する。

被告人大阪照久に対し、この裁判確定の日から三年間右刑の執行を猶予する。

理由

(罪となるべき事実)

被告人大新電設株式会社(以下「被告会社」という)は、東京都新宿西新宿七丁目二二番一九号に本店を置き、電気工事の設計施工等を目的とする資本金一〇〇〇万円(平成三年二月二〇日以前は六〇〇万円、同月一日以前は一五〇万円)の株式会社であり、被告人大阪照久(以下「被告人」という)は、被告会社の代表取締役として同会社の業務全般を統括していたものであるが、被告人は、被告会社の業務に関し、法人税を免れようと企て、完成工事高の一部を除外し、材料仕入高及び外注加工費を架空計上するなどの方法により所得を秘匿した上

第一  平成二年一一月一日から平成三年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が三二〇五万四〇六五円(別紙1の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成三年一二月二五日、東京都新宿区北新宿一丁目一九番三号所在の所轄新宿税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一〇〇七万五八九〇円で、これに対する法人税額が二四八万三一〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第二五四号の1)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額一〇七二万五二〇〇円と右申告税額との差額八二四万二一〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ

第二  平成三年一一月一日から平成四年一〇月三一日までの事業年度における被告会社の実際所得金額が一億九五五〇万八五六六円(別紙2の修正損益計算書参照)であったにもかかわらず、平成四年一二月二五日、前記新宿税務署において、同税務署長に対し、その所得金額が一四九六万八三六九円で、これに対する法人税額が四四一万六五〇〇円である旨の虚偽の法人税確定申告書(平成八年押第二五四号の2)を提出し、そのまま法定納期限を徒過させ、もって、不正の行為により、同会社の右事業年度における正規の法人税額七二一一万九〇〇〇円と右申告税額との差額六七七〇万二五〇〇円(別紙3のほ脱税額計算書参照)を免れ

たものである。

(証拠の標目)

〔括弧内の番号は、検察官請求の証拠等関係カード記載の番号を示す〕

判示全部の事実について

一  被告人の当公判廷における供述

一  被告人の検察官に対する供述調書三通(乙1ないし3)

一  大蔵事務官作成の完成工事調査書、材料仕入高調査書、外注加工費調査書、期首未成工事支出金調査書、期末未成工事支出金調査書二通、支払手数料調査書、接待交際費調査書、受取利息割引料調査書、支払利息割引料調査書、雑損失調査書、損金の額に算入した道府県民税利子割調査書、交際費等損金不算入額調査書、事業税認定損調査書及び領置てん末書

一  小池洋子及び永江富雄の検察官に対する各供述調書

一  宮島智久の大蔵事務官に対する質問てん末書

一  検察事務官作成の捜査報告書(甲22)

一  新宿税務署長作成の証拠品提出書

一  東京法務局登記官作成の登記簿謄本(乙5)及び閉鎖登記簿謄本二通(乙6、7)

判事第一の事実につき

一  被告人の検察官に対する供述調書(乙4)

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第二五四号の1)

判事第二の事実につき

一  大蔵事務官作成の賞与調査書、消耗品費調査書、租税公課調査書、雑収入調査書、固定資産売却損調査書

一  押収してある法人税確定申告書一袋(平成八年押第二五四号の2)

(適用法令)

罰条

〔ただし、刑法は、いずれも、平成七年法律第九一号による改正前のものを指す〕

被告会社につき 判示各事実につき、いずれも法人税法一六四条一項、一五九条一項、二項(情状による)

被告人につき 判示各所為につき、いずれも法人税法一五九条一項

刑種の選択

被告人につき 懲役刑

併合罪の処理

被告会社につき 刑法四五条前段、四八条二項(各罪の罰金額を合算)

被告人につき 刑法四五条前段、四七条本文、一〇条(犯情の重い判示第二の罪の刑に法定の加重)

刑の執行猶予

被告人につき 刑法二五条一項

(量刑の事情)

本件は、電気工事の設計施工等を業とする被告会社の代表者であった被告人が、元請けの担当者へのリベート代金捻出や個人資産蓄財等の動機から、完成工事高の一部除外、外注加工費及び材料仕入高の架空、水増し計上するなどして、過少申告により所得を少なくみせかけ、合計約七五九四万円の法人税を脱税したという事案であり、ほ脱率は、通算約九一・六パーセントに達している。

右犯行の動機、脱税額、ほ脱率の高さに、脱税工作態様が多種多様の計画的で巧妙な手段を弄していることなどをも勘案すると、犯情はよろしくなく、同種犯罪予防の見地からしても、その刑事責任を軽く考えることはできないと思われる。

ただ、被告人には、業務上過失傷害罪による古い罰金前科があるほかは、前科前歴がなく、本件発覚後は捜査に協力したほか、本件事件後、代表取締役を交代し、経理体制を刷新するなどの改善策を講じて真摯な反省の態度を示し、当然のこととは言え、個人財産を売却して、被告会社の納税に努めたほか、今後の納税にも努力する旨を誓っているなど被告人に有利に斟酌すべき事情が認められる。

また、被告会社は、本件二事業年度分の税金を修正申告し、法人税の本税を完納し、重加算税、延滞税、地方税については、各分納を誓っている。

当裁判所は、以上、一切の情状を考慮して、主文のとおり量刑した次第である。

よって、主文のとおり判決する。

(求刑 被告会社・罰金二五〇〇万円、被告人・懲役一〇月)

(裁判官 大谷吉史)

別紙1

修正損益計算書

〈省略〉

別紙2

修正損益計算書

〈省略〉

別紙3

ほ脱税額計算書

大新電設株式会社

〈省略〉

大新電設株式会社

〈省略〉

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